行政書士開業準備中~墓じまい編9(応用編2)

登場人物は前回と同じです。

 

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今から1年前、川崎四朗はずっと悩みの種だった墓じまいを終えた。

肩の荷が下りると同時に、緊張の糸がプツンと切れたようだ。

定年後、喉に刺さった小骨のように心に引っかかっていたのが、お墓問題だった。

もし自分たちの代で墓じまいを終えないと娘の負担になってしまう。

それは避けたかった。

しかし、紆余曲折をえて昨年、無事墓じまいを終える事が出来た。

そうすると、暇を持て余す毎日が再びやってきた。

最近知ったのが、コニュニティーセンターの図書室。

半日潰すには丁度良い。

受付の女性陣は皆主婦なのだろう。

最近入った女性は、何だか松坂慶子に似て、会うたびに心がドキドキしてくる。

正直言って、頭の中は大変な事になっている。

あの曲、何だっけな、、、そうだ愛の水中花だ。

また色っぽいんだよな~。

どうしても被せて想像してしまう。

それにしても黒のタイトなドレスがまた、、、あのむっちりした、、

「お父さん!」

妻の由紀子が背後から話しかけてきた。

「うおっー、、、い、いきなり、いきなり話しかける奴があるか」

「すみません、ちょっと」

「ちょっと何だ」

「相談事があったから、、、それにしてもイヤラシイ顔してたけど気のせいかしら?」

「イヤラシイって何だ、考え事をしてたんだよ。今の日本の置かれている状況について真剣に、、、」

「口を開けて、でれっと締りのない顔してたけど、あれよだれが、、、」

「出てるわけないだろ、こう見えて忙しいんだ!要件を言ってくれ」

「実は、私の実家のお墓の事、、、。」

 

妻の相談事とはこうだ。

妻の両親は2人とも四国に住んでいて、未だ健在だ。

何度か行った事があるが、二人とも優しい性格でいつも歓迎してくれた。

畑仕事をするせいか、年齢の割にとても元気だが、やはり寄る年波には勝てないらしい。

去年私が墓じまいをしたことを聞いて、妻の両親も真剣に墓じまいを考え始めている。

子供は妻一人。

今や私と、娘の亜希と東京暮らし。

そこで自分たちの代でお墓を終わらせるつもりだという。

 

「それも仕方ないかな、時代の流れだしなぁ」

「そうね」

「そういえば、お墓参りに行った事ないけど、お墓はお寺さん?」

「いや違うわ」

「じゃ公営霊園?それとも民間?」

「それがどちらも違うみたいなのよ。」

「おかしなこと言うなよ」

「本当よ。田んぼの脇の方に七基あるんだけど、そのうちの一つらしいの。詳しい事は正直分からないわ。因みにあと一基加われば、あなたの好きな八つ墓〇」

「別に好きじゃないぞ。あのせいでトラウマになったんだ。私が好きなのは、湖から出たスケキヨの、」

「食事前だから止めて!」

「振ったのはお前の方だ!」

確かに、あれは何だろう。

たまに見かける風景だ。

畑や田んぼにお墓がぽつんとある。

荒れ果てて、とても管理が行き届いているとは思えない。

でも、なんだか懐かしい感じで、私は嫌いじゃない。

 

次回、みなし墓地についてご説明します。

 

 

想いを紡ぐ墓じまい: in 横須賀 (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

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