行政書士開業準備中~墓じまい編13(応用編6)
前回の続きです。
市役所で、亡くなった主人の戸籍を全て集めた。
戸籍を遡るとその人の辿った人生が分かる。
以前結婚していた女性。
そして、その女性との間に出来た子供。
亡くなった主人の戸籍をまじまじと見つめた。
見おぼえのない女性の名前、その人との間に出来た子、、、は幸か不幸か見当たらなかった。
一瞬でも頭によぎった自分が恥しい。
誰かが死に別れは、生き別れとは比較にならない程辛いと言っていた。
その通りだ。
職場に行っても、家に居ても主人の顔を思い出しだしてしまう。
当たり前だ。
父親を見舞う為に私の職場に何度も来て、その姿を見て、いつの間にか好きになっていっのだ。
その職場にいる限り主人を忘れられない。
何の為にこの家があるのだろう。
主人と、この先ずっと、平凡だけど穏やかな暮らしをするつもりではなかったのか。
その幸せがあっけなく崩れ去っていった。
自分がどうにかなってしまいそうだ。
主人と過ごした家にいる限り、そして主人の一部が入った物がここにある限り忘れられないだろう。
生前、主人はよく不吉な冗談を言った。
これだけ働いたら、いきなりポックリいってしまうかもしれない。
もし万が一そうなったら、僕の骨は海に流してほしい。
私は、その言葉を聞くたびに怒ったものだった。
主人が亡くなって、葬儀の最中も、生前主人が残した言葉が頭によぎっていた。
本当に海に流してよいのだろうか。
主人の母親は早くに亡くなり、父親が男手一つで育ててきた。
父親の眠るお墓に入れなくて良いのだろうか。。。
それは駄目だ。
父親と離すような事はできない。
そんな時、墓じまいの為に図書館に通い、私に蘊蓄を垂れていた父親の言葉を思い出した。
分骨をしよう。
骨を散骨用と、お墓に入れる為の納骨用とに分けよう。
これなら、主人の意思にも反しないし、父親が眠るお墓にも入れる事ができる。
火葬場に行く前に、葬儀の人に分骨の事を伝えた。
さすがに手慣れたもので、てきぱきと動いてくれた。
「亜希子」
そんな時、父親の声が聞こえてきた。
「何?」
「お前はどうするんだ」
「どうするって?」
「このままだと和彦君の一部は海に、残りはご両親の眠るお墓にいくんだろ、お前はどちらを選ぶんだ」
「どちらを選ぶと言われても」
そんな事、今すぐ答えられない。
考えたこともない。
どうしよう。。。
思わず口走った。
「分骨を、、、焼いた骨を3つに分けてください」
もう少し、主人と居たい。
今はそれしか考えられない。
これで良かったのだろうか、、、。
横にいた父が小さく頷く姿が微かに見えた。