行政書士開業準備中~墓じまい編17(応用編10)
前回の続きです。
チヨ叔母さんからの、きつめの相談を受けた四朗さん。
一つ提案をします。
「チヨ叔母さん、遺書を書いてみたら如何でしょう」
あれ、何かおかしい。
一瞬の沈黙のあと、
「何ですって、遺書って貴方、自分が何を言ってるのか分かってるの」
いけない。遺書じゃなくて遺言だ!
遺書じゃそれこそサスペンスだ。
後ろで妻が吹きだすのが聞こえてきた。
実家の墓じまいを手伝った恩を忘れているらしい。
「申し訳ありません。遺書ではありません。遺言です。遺書は死ぬ時に書くもので、遺言は、、、あれっ遺言も死ぬ時に」
電話越しに言いようのない怒りのエネルギーが伝わってきた。
ヤバいぞこれは。
これどうする。
切っちゃって、迷惑番号登録か。
駄目だ、それこそ化けて出てくる。
チヨ婆さんは九州。
化け猫も確か、、、九州。
「遺言と言い、遺書と言い、どちらも私が死ぬ前提の話でしょ!ふざけるのも良い加減にしなさい。貴方がここまで失礼だとは思わなかったわ」
相談を受けた私がなぜ怒られなければならないのか。
というか今は、死ぬ前提の話をしてるのではないだろうか。
死なずに骨になる方法があるのだろうか。
あったら教えてほしいのだが。
しかし、これを伝えると火に油を注ぐだけだろうから、言うのは控えた方がよさそうだ。
「チヨ叔母さん、それでは少しお時間いただけませんか。図書館に行って調べてきます」
「あらそう、わかったわ。なるべく早く教えてほしいものだわ」
全く上から目線だ。
しかし今は忍の一字だ。
耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、、、。
とにかく台風は去った。
「貴方お疲れ様、大変だったわね」
後ろを見ると言っている言葉とは裏腹に半笑いの妻。
「そうねぇ、遺書と遺言は似てるけど、意味は全く違うわよね」
傷口に塩を塗って何が楽しいのだろうか。
翌日、松坂慶子似の職員さんのいる図書室で、遺言関連の本を読んでみる。
成程、幾つかの事が分かった。
遺言には書く事によって効力が生じる事柄と、書いても効力が生じないという事がある。
死んだ後の、骨については後者の様だ。
エンディングノートにかいても更に意味はないそうだ。
そもそもノートなのでこれに書いても、効果がないのは分かっている。
しかし、実家の墓じまいをして何でチヨ婆の尻拭いをせにゃあかんのだ。
どうせなら、本当に遺書を勧めてみるか。
遺書で思いの丈を打ち明けてみるのも意外にありではないか。
そんなふざけた事を考えながら、本を読み進めているとある一文に目が行った。
自分の亡くなった後についての事を、あらかじめ決めておくこと、それが死後事務委任契約。
特にお一人様にお勧めとある。
これだ!
これで千代婆を納得させられる、、、
といいのだけど。