行政書士開業準備中~相続編13(ペット相続③)
ペット相続シリーズ3回目です。
贈与?相続は何となく分かる。そもそも相続の相談に来ているわけだし。
もっともあげる相手は人じゃなくワンちゃんだけど。
怪訝そうな顔をしているのに気付いたのか、先生が話を補足する。
「ポイントは信頼している方に、ペットを譲るわけです。つまり贈与です」
「あげるわけですか」
「そうです。そして、その際に条件を付けます。遺産の一部、例えば200万をペットの世話代としてあげます。そしてお世話をするという条件を付けるわけです」
「お世話の対価として金銭と言うわけですね」
「仰る通りです。ポイントは①ペットを譲る事、②お世話をする代わりに金銭を渡す事、③これを契約でするか、遺言でするかです。できれば契約でする事をお勧めします」
言わんとするところはわかるが、いまいちピンとこない。
「誰かにお願いするというのでは駄目なのですか」
「人間の善意に頼るというのも一つの方法です。ただ責任を持って飼育をするという動機づけとしては弱いでしょう。契約を結ぶ、金銭が動く、これらは人を動かす為に最低限おこなっておきたいです」
「なるほど」
「ただ遺言で行っても、相手方は拒否することも可能です。やはり話を通して契約を結んでおくのが確実かと思います。さらにもう一つ付け加えると、遺言執行者を付けるのが確実です」
「遺言執行者、、、ですか」
「ええ、簡単に言えば契約や遺言書の内容が滞りなく行われているかどうかチェックします。もっとも遺言執行者を探す以上に難しいのが、信頼できる相手を探すという事です。逆に言えば、そういう相手がいるのであれば、高齢の方でもペットを飼う事は可能です」
「わかりました」
「それでは、お父様にくれぐれもお大事になさって下さいとお伝えください」
「ありがとうございます」
お礼を言って事務所を出た。
最後に先生はこう述べた。
「これは今回の件とは別の話ですが、震災の事も頭の片隅に入れておいて良いかと思います。避難先にペットを連れて行くことは難しいでしょう。それも視野に入れると、契約相手が同じ地域に居る事は一つのリスクになります」
ペットと高齢者、震災、重い課題を突き付けられた。
いずれ私も通る道だ。
そんな事を考えながら実家に戻ると、ぎっくり腰でうめき声をあげる父親の声が聞こえてきた。
時折、慶子~、無念じゃ~、と聞こえてくる。
そういう不埒の事を言うから母親に嫌味を言われるのだ。