後見制度は慎重に⑩

終わりの見えない後見シリーズ10回目、もう少しお付き合いくださいませ。

 

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「まず終活を考える時には場合分けをして考えます。先程申し上げた①自分の老後と②自分の亡くなった後の姿にわけます。そしてその状況に応じてどんな制度を使ったら良いかを考えます。一人暮らしで物忘れが出てきて不安なら見守り契約です。頭はしっかりしていても身体がいう事を効かなくなってきたら財産管理等の委任契約、自分が判断する力が弱くなった時に信頼できる人を選んで守ってもらうには任意後見契約です。それから自分が元気なうちにお墓をお引越しする墓じまいがあります。これらは①です」

「うわー」

田吾爺と美佐婆もが叫んだ。
私も叫びたいのだが自分も将来関わる事なので酔った頭をフル回転させた。
冷静に考えると飲んだ後にする会話とは思えない。

「皆様ご存じの遺言ですがこれはいいですよね。自分の財産をどうするかです。次にお一人様にとって重要なのが死後事務委任契約です。これで亡くなった後の葬儀、お墓、電話の解約等を行います。これらは②自分の亡くなった後の姿になります。今度まとめて皆様にお配りするのでどうぞご安心くださいね」

先生は安心と言うが不安でしかない。

私も真剣に終活の事を考える時期なのかもしれない。
その後も美佐婆、田吾爺の老老漫才と先生の冷静な対応で盛り上がりあっという間に終わりの時間を迎えた。
今後も同じメンバーで集まりたいが年齢的に皆が集まるのは難しくなるかもしれない。
誰かの掛け声で皆一か所に集まり写真を撮った。
勿論中心は美佐婆と田吾爺のお二方。
先生はこの後馴染みの焼鳥屋に行くと言っていた。
参加者は先生と私と私をサークルに誘ってくれた友人の宮田さんの三人だ。
サークル内では最も若い三人だか先生は四十代で私と宮田さんは六十代。
若い三人というのは少々無理があるかもしれない。
先生馴染みの焼き鳥屋はカウンターの前に椅子が五席で先客が居るので奥の座敷に座った。

「実は父の事で悩んでるのよ」
宮田さんが座ると同時に話し始めた。
「和江さんのお父さんっておいくつなの」
「八十四歳なのよ。美佐婆より一歳上だけどそれはどうでもよいか。今近くに住んでるんだけど心配でちょくちょく見に行くの。本人は大丈夫だって言うんだけど物忘れがちょくちょくあるのよね」
「そんな事言ったらうちの主人だってそうよ。この前なんか左腕を蚊に刺されたからって左手の指先にムヒの軟膏を塗って暫く固まってたのよ」
「そんな事いったらうちだって」
「まあまあ宮田さん、川崎さん話を戻しましょうか」

先生がトータル八杯目のウーロン杯を片手に割って入った。