エンディングノートと死後事務委任⑦

第7回です。

6回はこちらです。

 

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「亡くなった息子さんの骨壺は私が預かっています。トシ様は生前エンディングノートに亡くなった息子さんのお骨と一緒に樹木葬に埋蔵してほしいと書いてありましたよね」
「ですからそこは色々考えましてお墓に入ってもらう事にしました。そうでしょ聡さん」
「ええそうです。場所も費用も何も書かずただ樹木葬に亡くなった息子と二人で入りたいというのは無責任です」
「実は契約にはこう書いてあります。トシ様のエンディングノートに書いた希望がかなえられない場合、分骨を希望しますと」

はぁ今更何言っちゃってるの。

「分骨って骨を分けるという事ですか」
「そうですね。現在お骨の所有権は聡様にあります。ですので聡様のご意向を踏まえてということになります」
「それでその後分けたお骨はどうするのですか」
「亡くなった息子さんと共に海に散骨する事を希望します。それがトシ様の願いですから」
「いきなりそんな事言われても、朋子どう思う」

私に聞かれたってそんな事分からないわよ。

「先生、お義母様の希望通りしないと駄目なのでしょうか。あくまで決めることができるのは聡さんだと思いますが」
「散骨するくらいならお袋の希望を」
「ちょっと待って先生の意見を聞きましょうよ」
「基本的には先程から申し上げております通り聡さんの考え次第です。しかし私もトシ様と死後事務委任契約を結んでいる以上、最大限希望を叶える義務があると存じます。またトシ様も生前に、分骨なら嫁ぎ先のお墓にも入る事になるので緑川家に迷惑はかからないだろうとも仰っておりました。そこでお願いをしている次第です。後は聡様の考え一つになります」
「少し考えさせていただいてもよろしいですか」
「勿論です。ご納得いただけましたらご連絡下さい。亡くなった息子様とお母様の散骨の手配等の事務処理は私で行います」

納得できないわ。

「私の方からも一つ聞いてもよろしいですか」
「はい、なんでしょう」
「仮に聡さん、いえ主人が海洋散骨に納得しない場合どうなりますか」
「勿論聡様の自由ですので私がとやかく申し上げる事はできません。ただ契約を最大限実現したいという気持ちはあります。ですので然るべき方に交渉を委ねる事も視野にいれております」
「それは弁護士を立てるという事ですか」
「ご想像にお任せ致します。行政書士は弁護士法により交渉はできないという事はお伝えしておきます。交渉ができるのは原則、弁護士の専権事項と考えております」

この行政書士、見かけによらずタヌキだわ。
お次は弁護士様のご登場ってストーリーってわけね。
嫌なやつ。

「じゃもう良いですよね。聡さんそろそろ帰りましょうか」

もうどっちだってよいわ。
好きにしたらよいのよ。

「そうだな。では遺言執行の件よろしくお願いします」
「承知いたしました」