1、エンディングノート・川崎家の朝①

登場人物

川崎四郎(もうすぐ古希)

川崎由紀子(妻)

川崎亜紀(長女)

金谷真美(コミセン職員)

山本行政書士(エンディングノート講座の講師)

よろしくお願いします!

 

 

 

 

朝起きて飯を食って新聞を読んだ後何かを忘れている。

何だっけかな。

いかんな、全く思い出せん。

近頃こんなことばかりだ。

買い忘れがないようにメモを書いたらそのメモを置き忘れる。

車でスーパーに買い物に行き重い荷物を持って電車で帰る。

眼鏡をかけたままシャワーをあびてしまう。
久里浜の本屋にエンディングノートを買いに行き、北久里浜の焼き鳥を買って帰ってしまう。

時々妻の顔が別の女性に見えるが、これは忘れるというより願望に近い。
やれやれだ。
年は取りたくないものだ。

エンディングノートと言えば、あれだ、行政書士が講義をするんだけど、名前何ていったけかなぁ。

あれ、ところで私は何を考えていたのだろう。

これはまずい。

まったく思い出せないぞ。

すきな女優の名は覚えているのに今思っていたことが思い出せない。

そうだ、熱いお茶を飲みたいんだ。

「由紀子」

えっと

「あれをくれ。あれだよ由紀子」

妻の由紀子は昨日から泊まりに来ている娘の亜紀との会話に夢中だ。
最近は次の日が休みだと遊びに来るのだ。
妻と喧嘩になると必ず私の味方になってくれるから嬉しい限りだ。

だがそろそろあれをして親を安心させてほしいものだ。

あれだが何だっけかな。
しかしこれはいかんぞ、言葉が出てこない。

そうだ、結婚だ。

亜紀もそろそろあれをしてもらわんと。

あれと言えばお茶だ。

由紀子は何で用意していないんだ。
あれと言えばお茶だ。

由紀子は何で用意していないんだ。

この前は人の顔をじろじろ見ながら、朝、昼、夜、何で三食きっちり食べるのかとぬかしおった。

自分は三食加えて必ずおやつを食べてアザラシからトドに変身しおったくせに。
しかも昨日にいたってはテーブルにレトルトカレーを置いて自分は飲みに行きおった。
いやカップラーメンだったかな。

あれっ思い出せん。

いやカレーだ。
今日は歴史サークルの人達と飲みに行くからとレトルトのカレーを置いていったのだ。

人を馬鹿にするのも大概にせい。

出かけるなら夕飯の用意をしてから出かけるべきだろう。

しかしこの前横須賀中央で食べた海軍カレーは美味しかった。

なぜ海軍カレーに牛乳がつくのだろうか。

牛乳を飲もうとして何故かカレーにかけてしまった。 

川崎四郎痛恨の極みである。 
そんな事よりあれだ。

 

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