4、エンディングノートと終活講義・前半①

 

 

 

www.akihiroha.com

 

駅の改札を抜け、久里浜方面に進み最初の信号を右折して少し進むと右手に行政センターが見える
その二階にコミュニティセンター、通称コミセンがある。 
火曜サスペンス劇業を通称火サスと言うのと似たようなものだ。

ここのコミセンも最近一階と二階のお手洗いが改葬され綺麗になったのだが、それ以外は以前と同じままだ。

やはり横須賀の財政は厳しいのだから仕方ないのだろう。
しかし数年前に全面的に改装したお隣のコミセンと比較すると情けないくらいに違う。

さて横須賀には多くのコミセンがあり市民向けに数多くの講座が用意されている。
例えば、料理教室、語学講座、幼児に関する事等などである。

物忘れが激しい私にとっては、ボケる前にぜひボケ防止講座をやってほしい。

因みに今日行われているのは、昨今熱を帯びているエンディングノートを中心に、終活全般を説明する講座である。

コミセンの利用者自体が年齢の高いせいもあり教室にはそれなりの人数が入っている。

やはり皆興味がある分野なのであろう。

しかしその様相はさながら養老院である。
いや、今そんな言い方をしない。何だっけかな。

いかん、ボーとしていたら既に十分経過している。

気が付いたら講座が終わっているのでは洒落にならない。

今は集中して聞こう。

「確かに遺言書、契約書等と比較するとエンディングノートは取り組みやすいです。気軽に書店で手にすることができます。しかし私個人としては、エンディングノートを絶賛しているわけではありません。とはいえエンディングノートをきっかけに多くの終活関連の事に気づく事ができます。介護は非常に重要で身近な問題としてエンディングノートの有無に関わらず考える事ができます。しかし終活はそれだけではありません。延命治療やお墓の問題、勿論相続の問題等、問題は山積みです。大切な事はエンディングノートのメリットとデメリットをしっかり理解してそれに応じて書き分けることになるかと思います。今日の講座ではざっくりとですが、そのようなところに踏み込んでお話し致します」

そういうと先生は一瞬間をとり、深呼吸をして水を一口含みまた話し始めた。
傍目には高齢者の方向けにゆっくり話しているように見える。
真相は恐らく昨日の歴史サークルの飲み会で相当飲んで寝不足なのであろう。
目も若干充血しているようである。
実際、二次会まで参加した妻の由紀子の話では最後は一人で近所の焼き鳥屋に千鳥足で向かったそうだ。
講座の冒頭で自己紹介をした後、一瞬俯いて手で頭を押さえたところを見ると二日酔いなのかもしれない。
さて今日の講師は行政書士の山本先生だ。
なんでもエンディングノートの講師をコミセンの職員に頼まれたということである。
「こうみえても色々仕事がたまってるんですよ。まぁ仕事といってもサークルの人達と御朱印状持ってお寺をまわったり、最近ではドラマの影響もあって人気上昇の明智光秀の本を代わりに探してあげたりです。実は最近暇で本ばかり読んでますよ。でもたまに仕事もしてます。だから結構忙しいんですけど、知り合いの職員さんだから頼まれたら断れないんです。僕はお人好しなのかもしれません。考えてみると九十分で終活全般を含めたエンディングノートを講義するなんて無茶振りですよね。終活って文字にしたら二文字ですがやる事てんこ盛りです。おまけに謝礼なんて雀の涙しかもらえないんです。もっともこれで何か仕事に繋がればよいのですが。そういう下心もちょっとはあるんですよ。まぁ折角の機会なので頑張ります」