22.番外編・墓じまい行政書士③

 

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「荒木さんこっち、こっち。こちら墓じまい探偵の山本先生。行政書士が副業なんですよ」

 

「ちょっと川崎さん勘弁して下さいよ。僕、探偵じゃないです。行政書士ですよ。荒木さん、初めまして行政書士の山本です」

 

「思わず笑ってしまいました。大変失礼いたしました。荒木と申します」

 

改めて荒木さんから山本先生に概略を説明して八方塞がりになりつつある現状を説明してもらった。

暫く考えたあと山本先生は口を開いた。

 

「お話をお伺いする限り決して悲観する状況ではないと思いますよ。まずお父さんが亡くなった後で長女である荒木さんがお墓を引き継いだ。いま考えるとこれで良かったと思います。前提ですがお墓を移転する、つまり法律上は改葬と言いますが、その権利を有しているのは荒木さんです。仮にお墓を引き継いだのがお母様である場合、年齢的にも体力的にも改葬をするのは厳しいでしょう。更にもし認知が進んだ場合、お母様に後見人をつけるつけないといった話になるかもしれません。そうなるとお母様の存命中に改葬をするのは厳しいでしょう。更にお母様の今現在の生活も叔父さんに頼っている事が想定されます。叔父さんの反対を押しきっての改葬は現実的ではないでしょう。次に叔父さんがお墓を引き継いだ場合、お話を伺う限りそもそも改葬に反対する可能性が高いでしょう。現に反対しているわけですから」

 

「結果的に私がお墓を継いで正解だったという事なんですね」

 

「私はそう思います。ですから叔父さんが反対するというのは一つのご意見として拝聴し改葬の準備は粛々と進めればよいと存じます」

 

「そうなんですか。親族の反対があると墓じまい、じゃなく改葬は難しいと聞いていました」

 

「では親族の反対について掘り下げてみましょう。現在の法律では許可が下りないでしょうが、以前は様々な場所にお墓がありました。家の敷地にあったり、田んぼにあったりです。その敷地の所有権が親族名義になっていたり、親族との共有になっていると、難易度が急激にあがります。敷地の形を変更するわけですから親族の同意が必要になるでしょう。そうなるとなかなかハンコを押してくれないことが想定されます。よく聞きませんか。ハンコを押してくれないから話がすすまないと」

 

「確かにそんな話はよく聞きます。相続なんかでなかなかハンコを押してくれないとかですよね」

 

「仰る通りです。つまり親族の反対には三種類あります。①お墓を引き継ぎ、その敷地も所有しているパターン、②お墓は引き継がないが、その敷地を所有、またはその逆のパターン。しかし今回はそのいずれでもありません。③お墓も継いでおらず、その敷地も所有しておりません。今回は、荒木さんがお墓を継いでます。そしてそのお墓はお寺にあるわけです。そうするとご住職が管理者になるわけですね。ところが遺骨を取り出すのに一体二百万という話しになったわけです」

 

「そうなんです。実は私も墓じまい、正確には改葬ですよね。これは雑誌等でよく取り上げられてました。だから勉強はしたんです。ところが結局話しがこじれてしまいました」

 

そういえば私も墓じまいを頑張ったわ。

正確には主人が山本先生に相談して、主人と父が動いたんだけど。

四国まで行ったけど久しぶりに両親にも会えたし嬉しかったな。

でも今回の荒木さんの件はどうかしら。