行政書士開業準備中~墓じまい編16(応用編9)
前回の続きです。
田宮さん、、、。
田宮チヨさん。
チヨ叔母さん。
「チヨ叔母さん、ご無沙汰しております」
「四朗さん、急に電話掛けてごめんなさいね。実は折り入って相談があるの」
何だ何だ。
嫌な予感がするぞ。
「相談ってどんな事でしょう」
「何とかしなさいな」
目的も理由も言わずに、いきなり丸投げですか。
勘弁して下さいよ。
しかも後ろの妻が聞き耳立ててる。
「いきなり何とかしなさいと言われても」
「ねぇ四朗さん、貴方昨年墓じまいしたわよね」
「えぇしましたよ、その事は事前に相談いたしましたよね」
うわぁ嫌な予感的中か。
「それで私も色々考えたのよ」
「どのような事でしょうか」
「お墓を壊せるなら、お墓に入らない事も出来るわよね」
はい?意味が分からんぞ。
お墓を壊す事と、入らない事は全く別問題かと思うが。
「私嫁ぎ先でとても大変な思いしてきたのね」
「そうなんですか」
「それで、できれば嫁ぎ先のお墓に入りたくないのよ」
そういう事か。
「では入らなければよろしいのでは」
どうも、この返答が気に入らなかったようだ。
「入らなくて済むなら苦労はしないわよ」
確かにそうだ。だから電話を掛けてきたのだろう。
それを私に言われても仕方ない。
相変わらず妻は微動だにせず聞き耳をたてている。
「勿論息子に相談したわよ。そしたら好きにしたら良いって。でも暫くしたらお墓があるんだからそっちに入れっていうのよ」
そのどこが間違っているというのか。
墓があればそっちを勧めるのは至極普通の考えだ。
「そもそも息子の嫁が悪いのよ。あの嫁は私が嫌がる事をするのね。私可哀そうでしょ」
十分私も可哀そうだ。
いったいどうすれば良いというのだ。
「これって責任の一端は四朗さんにあると思うのよ」
「なぜですか」
「だってそうでしょ。四朗さんが墓じまいしなきゃ、そもそも嫁ぎ先のお墓に入らないって事も頭に思い浮かばなかったと思うのよね」
それはチヨおばさん、こじつけですよ。
大体、何で好き好んで墓じまいなんかせにゃあかんのだ。
「しかも貴方がお墓をぶっ壊したから、私の実家のお墓もなくなっちゃたのよ」
ぶっ壊したのは石材業者ですよ。
「だ・か・ら、何とかしてね」
一体、どうしたらそのようなぶっ飛んだ思考になるんだろうか。
後ろの妻の背中が小刻みに揺れている。
笑っているのか。
主人の不幸がそんなにおもしろいのだろうか。
やれやれ、また面倒な事が降りかかりそうだ。