行政書士開業準備中~墓じまい編11(応用編4)

 

 墓じまい応用編の、1~3回目は以下をご参照下さい。

 

www.akihiroha.com

 

 

www.akihiroha.com

 

 

www.akihiroha.com

 

 

「風葬という言葉を御存じでしょうか。」

おもむろに市役所の職員さんに聞かれた。

「いや知りませんねぇ」

初めて聞く言葉だった。

「ちらっと聞いたことがあるのぅ」

「お義父さん御存じなんですか?」

「いや言葉だけで、実際に見たわけではないがのう」

「勿論現在ではありません。」

「そうなんですか。その風葬とはどのようなものなのでしょうか」

「野ざらしです」

「えっ、、、野ざらし、、、」

「はい、よく人は土に還るって言いませんか?」

「確かに」

「現在の主流である火葬の歴史は浅いです。それまでは、土葬か、それこそ草むらに遺棄するような風葬が庶民の間では主流でした。」

 

正直言葉が出てこない。

職員さんが続けて話す。

「ではお墓に戻ります。お墓というと石のお墓を思い浮かべる方が多いです。それは合っていますが、時代でいうと江戸時代の頃からで、個人個人の墓です。所謂檀家制度が確立された頃です。

それまでは、埋葬した後、石を置いたり木を植えたりでした。〇〇家乃墓といった家墓は大正時代から昭和初期に始まった話です。」

全く知らない事ばかりだ。

それにしても、先祖代々の墓がこんなに歴史が浅いとは驚きだ。

「家墓については、読む資料によってまちまちですが、どんなに早くても江戸末期か明治初期あたりです。」

 

「さて前置きが長くなりましたが、墓地・埋葬等に関する法律ができたのは昭和23年です。この法律の10条に墓地、納骨堂又は火葬場を経営するものは、都道府県知事の許可を得るとあります。」

「ええ」

ここは知っている。この前、読んだばかりだ。

「勿論、この法律ができる前からお墓は存在しているわけです。」

「仰る通りです」

思わず敬語を使ってしまった。

「そこで26条で、従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけている場合は、許可したものとみなすとしています。」

「なるほど」

「許可したものとみなすので、みなし墓地というわけです。そこで許可されているかどうかは、市役所にある墓地台帳をみて判断します。」

 

正直新しい話が多くてついていけない。。。

 

「この墓地台帳は、墓地の経営許可を管理するものです。簡単に言うと許可された墓地に関するものが載っています。裏を返すと、許可の得られていない墓地については載っていないわけです。」

 「つまり、ここに載っていない場合、墓じまいをする事が難しくなるわけですか」

「そういう事になります」 

このレベルの方が、定年後行政書士になってくれると安心だ、、、。

 

帰りの電車。

「でも良かったわね。お茶菓子もってきてくださった〇〇さんが、みなし墓地の管理者だなんて。」

妻の由紀子が話しかけてきた。

「灯台下暗しとはこのことだよ。管理者さえ分れば後の手続きは通常の墓じまいと同じだからね」

「もし墓地台帳に載っていなかったら、どうなっていたのかしら。結構多いんでしょ」

「かなりあるみたいだよ。今までは、表立っていなかったけど、これからはどんどん出てくる。近くのお寺さんに管理者になってもらうか、土地の所有者を探すか、まあ、行政も頭の痛い所だよ。」

 

結局、墓地台帳に載っていたのが、お義母さんのお茶飲み仲間で話がとんとん拍子に進んだ。

もし、許可が得ておらず、管理者も見つけられないと無縁墓になる所だった。

とにかく、お義父さんと、お義母さんのホッとした顔が目に浮かぶ。

良かった。。。

 

そんな事を考えていた時、電話がきて席を立っていた娘の亜希子の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。。。