行政書士開業準備中~和文契約書編8
第〇条 甲又は乙は、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、一切の損害を賠償しなければならない。
上記の形が、契約書に記載される損害賠償の形の一例です。
この一文だけ提示された場合、じっくり検討できます。
ただ、契約書に記載されるのは、損害賠償条項だけではありません。
他にも重要な条項がいくつかあります。
なかなか契約書を読みなれないと、ポイントがつかめない所です。
いきなり、甲、乙と出ていますが、契約書の最初に会社の名前や個人名が出てきて、それを定義づけて簡潔にしたものです。
例えば、A株式会社(以下甲という)とB株式会社(以下乙という)、みたいな感じです。
さてこの条項、甲と乙と明記されています。一見公平と思えるかもしれません。
一切のとあります。これ気になりますよね。一切のって、そのまま読めば損害全てです。
これは削りたいですね。
ビジネス上、損害がむやみに広がるのは、お互い得策ではないというのが、私の考えです。
さらに、自分たちに何の落ち度もないのに損害賠償を負うのは釈然としません。
そこで、こんな一文を加えます。
故意または過失により
故意とはわざとという意味です。
過失はうっかりという意味です。
第〇条 甲又は乙は、故意または過失により本契約に違反して相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、損害を賠償しなければならない。
これで大分バランスが取れてきました。
こんな感じで契約書のレビュー業務をしますが、これは相手との力関係により変わります。
この条項を、なるべく損害を増やしたくないとき、つまり契約によっては明らかに自分が損害賠償を負う立場であれば、最後の損害の箇所をいじくります。
こんな感じです。
通常かつ直接の損害を賠償しなければならない。(但し逸失利益を除く)
通常損害(⇔特別損害)、直接損害(⇔間接損害)、逸失利益などは、法律をバックボーンにしないと、ちょっときついところです。
次回、これらの馴染みのない用語を説明いたします。
そして、この条項を業務委託契約、つまり芸能人が結ぶ契約を想定しつつ、当てはめてみたいと思います。
勿論、前回取り上げた、秘密保持を内容とした契約書にも、損害賠償条項はあります。