エンディングノートと死後事務委任③

神奈川ネタで久々の嬉しいニュース。

ついに我がベイスターズが単独三位です。

大洋ホエールズの時代からのファンとしては久々の頂点を目指してほしいです。

今年はいけそうな気がします。

思い起こせば10連敗中、他人ごとのようなラミレス監督のコメントを聞くたびムカッとしましたが、それも今は昔の事。

 

前回はこちら。

 

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「そんな事は気にしなくて良いのよ。では私の元気なうちに思っている事をお伝えしますね。今まで住んでいた家は月8万で貸してるのよ。この家は息子に相続させます。子供は息子しかいないのよ。主人は早くに亡くなったってしまったし」
「わかりました。お話を聞く限り相続人はご子息お一人になりますね」
「その家を息子が相続した後、売却するか、このまま持っていて家賃収入を選ぶかは息子に任せる。問題は嫁よ。昔、法律事務所に勤めていることがあるのよ。何かにつけて法律を持ち出して私をやり込めようとするから腹が立って仕方がないわ。今の人は家に嫁ぐって発想がないのよね。あら、ごめんなさいね、こんな事言っちゃって」
「いえいえ人間関係は外からは分からない事があります。勉強になります」
「それで嫁には何もあげたくないのよ。だけど息子が豊かになれば嫁にも恩恵はいっちゃうのよね」
「直接的にお嫁さんが何かを得るわけではないですが」
「間接的にはいってしまうのよね。まあそこは仕方ないわ。それで現金は500万ほどあるの。何もしなければ息子にいくわよね」
「そうですね」

「ペットの相続の話に戻るわね。例えば孫の咲に300万相続させる代わりにワンちゃんを飼育すると遺言に書くのは構わないのかしら」
「はい。ただ咲さんはお孫さんで今回の場合相続人にはなりません。300万を相続させるではなく、300万を遺贈するという表現になります。相続という言葉を使うのではなく、遺贈つまり遺言で贈与という意味になりますが、こちらの用語が適切です」
「書き方はお任せするわ。遺言執行者って最近知ったのよ。咲から聞いたのだけど、先生は遺言執行士って資格もお持ちなのよね」
「資格っていう程の物でもないですが、一応持っているといえば持っています。これを有効活用しているかと言われると胸を張ってできているとは言えないです」
「なら今回活用して下さい。遺言の執行は先生にお任せします。実はもう一つお願いがあるの。こっちの方がちょっと厄介かもしれないわね」
「厄介と仰いますと」

さてこれを他人に見せるのは先生が初めてね。
どんな顔するかしら。

「これをどうしようか迷っているの。今日来てもらったのはこちらが主眼かしらね」
「これは何でしょうか」
「見ての通り、骨壺よ」
「それは分かりますが」
「この骨壺の中に入っているのは私の死んだ息子なの」

先生の目が点になっている。
やっぱり驚いたわね。

 

エンディングノートと死後事務委任②

 

最近、神奈川がメディアを騒がしている気がします。

昨日の夕方は横浜で異臭騒ぎがありました。

28日は平塚で遺体が上がりました。

先週は横須賀で逃亡犯逮捕。

その前は シーサイドライン逆走。

そろそろGood newsが欲しいところです。

 

以下が前回の記事です。

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「あらあら、わざわざ来ていただいて悪いわね」
「いえいえ川崎様からはご指名と伺いました。とても光栄な事ですよ」
「川崎さん、あっ咲のご友人ですよね。最近年のせいか物忘れがひどくなっちゃってね」
「それは誰でも同じことですよ。僕も昨日結構飲みましたがどんな会話したか覚えていませんから」
「そりゃ誰だってお酒が入れば覚えていませんよ。相変わらず面白い事を仰いますね」

お酒なんて最後に飲んだのはいつかしら。
もう一度飲んでみたいけど多分無理ね。

「ところでワンちゃんは元気ですか」
「実は貰ってくれる人が見つかってもう居ないのよ」
「えっそうだったんですか。でも今渡さなくても大丈夫というご説明をしたはずですが」
「それはわかってるわ。ペットには相続はできない。ただし私が死んだ後、金銭を渡す事を条件にペットを飼ってもらう約束をする。これで相続と同じ様な事ができる。それを遺言でするか契約でするかって事でしょ」
「ええ、仰る通りです」

それが出来たら良かったんだけれども。

「孫の咲が貰ってくれたのよ。ほら結婚したでしょ。ご主人が犬を大好きだから大丈夫だって。それで先月譲る事にしたし。だって咲にはなついていたわけだから結果的には良かったと思うわ」
「そうだったんですか。でも寂しくはないんですか。ワンちゃんと一緒に暮らすためにペット可の老人ホームを選んだと聞いていますが」
「そりゃ寂しいわ。でも事情が変わったのよ」

ごめんなさいね、久しぶりなのにこんな事話さなきゃならないなんて。
この前みたいにペットの話ができれば良かったのに。
本当に残念だわ。

「何かあったのですか」
「すい臓がんってご存知ですよね」
「はい」
先生の顔がくもって何か言いたそうで言えない顔してる。
当然察するわよね。

「ご想像の通りよ」
「相当悪いのですか」
「ステージ4と聞いたわ。今年の夏は越せそうだけど、秋が来るまでには全て片づけておかないとね」

「すみません。この様な話になるとは思っていなかったものですから、何と申し上げて良いのか言葉がみつかりません」

エンディングノートと死後事務委任①

昨日は行政書士の登録交付式。

こんな証票を頂きました。

 

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昨日のお話の中で、偉い行政書士の先生から専門分野はお客が決めるというお言葉がありました。

どうなんでしょう。

お客が決めるという考えに反対というのではなく、そのように決めつけて押し付けるという考えがどうなんだろうと思ってしまいます。

いきなり怒られそうですね(笑)

人によってはまっさらな状態でお客に育てて頂く事もあるでしょう。

また別の人は専門分野を決めて、その中でお客に育てて頂く場合もあります。

色んな考えがあって良いと思いますが如何でしょうか。

 

 

どちらにしても偉い先生とは考え方が合わないわけです。

 

では第2章

因みに今までのは第1章です。

 

某老人ホーム

「こんにちは」
「こんにちは、私、行政書士の山本と申します。今日緑川トシ様と十三時から面談する予定となっています。今はお部屋にいらっしゃいますか」
「少々お待ちください。ただ今確認します。山本先生ですね。緑川様から伺っております。直接お部屋に来てほしいとの事です。お部屋は二階のユニットBの九になりますがご存知ですか」
「二階ですか。初めてですかがちょっと行ってみます」
「それでしたらご案内します。エレベーターをご利用できますが暗誦番号が必要になるんですよ。ではこちらへどうぞ。エレベーターを出たらテーブルを挟んだ真向いにお部屋がございます」
「ありがとうございます」
「帰りはお近くの職員にお声掛け下さい。また暗証番号が必要になります」
「わかりました。ありがとうございます」
「それではごゆっくりどうぞ」

トントントン
ドアをノックする音が聞こえた。
介護の職員さんではなさそうね。

「どうぞ開いていますよ」
「失礼します。ご無沙汰しております。行政書士の山本です」

たまにはお客様っていうのも悪くないわ。

 

後見制度は慎重に⑫

 逃亡犯のおかげでメディアで横須賀が賑わっています。

もちっとましな話題で有名になって欲しいものです。

やれやれです。(笑)

最近は時間の関係でブログ更新で手一杯ですが、時間の許す限り皆様のブログに遊びに行きたいと思っています。

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「やはり宮田さんの場合ですと、お父様と任意後見契約を結ぶのがよろしいかと思います。万全を期すなら財産管理等の委任契約も同時に結べば隙がなくなるでしょう。是非ご検討下さい」

「ありがとうございます。少し考えてみます」

「任意後見は法定後見に優先します。もしお父様に成年後見がつくのに躊躇を覚えるのであれば任意後見を活用する事になります。個人的な意見ですが、高齢者一人で住んでいる場合のようなやむを得ない場合を除いて、家族の財産は家族で守る任意後見をお勧めしますね。肝は後見人が付くような人に預貯金を持たせない、もしくは限りなく少なくする事です

任意後見か、いつか必要になるかもしれない。
ふと書店の相続コーナーを賑わすあの商品を思い出した。

「最近流行のエンディングノートなんてのはどうなんでしょうか。場違いなものでしょうか」
「そうですね。あくまでノート、メモなんです。法的な効果はありません」
「じゃ無意味なものでしょうか」
「いえいえ、これも使い方です。あくまで法的に効力のある制度の補助的な意味合いと捉えるとよいでしょう。物のありか、葬儀に誰を呼んでほしいか等々です。過大な期待を持たなければ使いようはありますよ」

結局この後一時間ほど話して解散となった。
先生とはここで宮田さんとはバスに乗って駅の改札口で別れた。
そういえば先生は明日仕事だとか言っていたがこんなに飲んで大丈夫なのかしら。

酔いと相まってふと見上げると終活という単語がフワフワと顔の前を行ったり来たりしている。
捕まえようとして一旦手の中に掴んだかと思ったがすぐに手の中からするっと逃げてしまう。
そしてまた目の前をフワフワ飛んでいる。
どっかいってくれたらと思うのにいつまでも目の前を飛んでいる。
そのくせ捕まえたかと思うとするっと逃げてしまう。
なるほど終活からは逃げられないというわけか。
いけない、早く帰らないと二人が心配しちゃうわ。

 

後見制度は慎重に⑪

そろそろ終わりの見えてきた後見制度の11回目。

前回は以下です。

 

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「確かにそうですね。それで問題は父の家の事なのよ。今は父が家に一人で住んでるのよね。いずれ家を売って老人ホームっていう事も考えているんだけどもし認知が進んじゃったら家はどうなるのかしら」
「認知症になって家を売却なんてできるのかしら。ねえ先生」
「そもそも認知症の場合、日常生活が困難になる場合が多いです。家の売却なんていうのは論外でしょう。一般的には後見がつきます」
「先程の成年後見の話ですよね」
「ええ。先程の続きになります。例えば任意後見の場合ですが、これは本人がしっかりしているうちに信頼している方と任意後見契約を結びます。任意ですからお父様本人の意思が入るわけです。お父様が元気なうちに宮田さんと任意後見契約を結ぶ事も可能です。そしてお父様の認知が進んだ場合、宮田さんがお父様の代わりに家を売却してそのお金で老人ホームの入居の手続きをする事となるでしょう」

「では成年後見の場合はどうなるのですか」
「良い質問ですね」
というと先生は九杯目の緑茶ハイを注文した。
十杯目にリーチがかかった。

「この場合法定ですから本人や家族の意思は入りません。家庭裁判所が誰を成年後見人に付けるか決める事となります。多くは弁護士や司法書士がなる事になります。一人暮らしの場合なら問題ないでしょう。しかし家族と同居の場合、家族の中に第三者が入り込むわけです。これをどう考えるかによります」

「あまり嬉しくないですね」
「うちの場合、別に暮らしているとはいえすぐ近所です。別に弁護士や司法書士の先生のお世話になる必要もないと思います」

「もう一つ忘れてはいけないのが報酬です。成年後見人が付いたとして無事家を売却しても成年後見人は外れません。その方が亡くなるまで財産を管理する代わりに報酬を支払う事になります」
「えっ、家を売却できて父が老人ホームに入居できたら成年後見は外れるんではないのですか」
「いえいえ外れません。家を売却するために付けるわけではなく本人の財産を保護するために付けるわけです。ですから成年後見の使い方には注意が必要です。一度成年後見人がつくとそれを外すのは容易ではありません。ですので安易な利用はお勧めできません」

「例えば父が普段から自分がボケたら家を売って老人ホームに入りたいと言っていた場合はどうですか」
「基本的に本人の意思ではなく、本人の財産確保を目的とする制度なんです。よく一人暮らしのご老人が変な契約を結んでしまうなんて聞きますよね。この成年後見はまさにそういう一人暮らしのお年寄りを守るのには最適な制度です。強力なバリアが張られるとイメージすれば良いでしょう。ところがこのバリアは本人以外の全てに向けられます。家族も例外ではありません。ですから使い方には慎重を期す必要があるというわけです。家の売却については、ケースバイケースと言わざるをえません」

「成程」

いや知らなかった。
成年後見人がついても万事解決っていうわけでもなさそうね。

「実は無事売れたら良いですがそうでない場合悲劇ですよ」
「と言いますと」
「例えばご高齢の夫婦でご主人が認知症が進んでいる場合を想像してください」
「はい」
「まず前提として家の名義はご主人です。そして二人でお住いの家を売ってそのお金を利用して老人ホームに入ろうとします。ところがご主人が認知症なので売れません。そこでご主人に成年後見人をつけて売ろうとします。ところが売れなかった場合どうなるでしょうか」
「どうなると言われても」
「家が売れなくても成年後見人は外れません。その結果ご主人の年金等は成年後見人の管理下におかれます」
「えっだって今まで二人で使ってたんでしょ。そんな馬鹿の事」
「そんな馬鹿な事がおきます。あくまで夫の年金は夫のものですから。そしてその夫の財産を守るのが成年後見人の役目です。さらに報酬は払い続けなければなりません」
「だって夫婦で今まで頑張ってきたのでしょ。夫の年金といったって普通の家庭は二人合わせて使うと思うんですが」
「それが成年後見が付くとがらりと変わるわけです。けっしてこの制度が悪いわけではないんです。一人暮らしの高齢者にとっては心強い制度です。問題なのは後見制度をそれ程詳しくない方が安易に利用を勧める事です。どんな薬だって副作用はあります。これを見極める必要があるというわけです」

「因みに成年後見人の方は介護を手伝ってくれるんですか。もしそうなら助かります」

「いえ、手伝いません。介護のような事実行為は出来ないんですよ」
「それなら何の為の成年後見人ですか」

先生は黙っている。
酔いが一気に冷めてきた。

後見制度は慎重に⑩

終わりの見えない後見シリーズ10回目、もう少しお付き合いくださいませ。

 

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「まず終活を考える時には場合分けをして考えます。先程申し上げた①自分の老後と②自分の亡くなった後の姿にわけます。そしてその状況に応じてどんな制度を使ったら良いかを考えます。一人暮らしで物忘れが出てきて不安なら見守り契約です。頭はしっかりしていても身体がいう事を効かなくなってきたら財産管理等の委任契約、自分が判断する力が弱くなった時に信頼できる人を選んで守ってもらうには任意後見契約です。それから自分が元気なうちにお墓をお引越しする墓じまいがあります。これらは①です」

「うわー」

田吾爺と美佐婆もが叫んだ。
私も叫びたいのだが自分も将来関わる事なので酔った頭をフル回転させた。
冷静に考えると飲んだ後にする会話とは思えない。

「皆様ご存じの遺言ですがこれはいいですよね。自分の財産をどうするかです。次にお一人様にとって重要なのが死後事務委任契約です。これで亡くなった後の葬儀、お墓、電話の解約等を行います。これらは②自分の亡くなった後の姿になります。今度まとめて皆様にお配りするのでどうぞご安心くださいね」

先生は安心と言うが不安でしかない。

私も真剣に終活の事を考える時期なのかもしれない。
その後も美佐婆、田吾爺の老老漫才と先生の冷静な対応で盛り上がりあっという間に終わりの時間を迎えた。
今後も同じメンバーで集まりたいが年齢的に皆が集まるのは難しくなるかもしれない。
誰かの掛け声で皆一か所に集まり写真を撮った。
勿論中心は美佐婆と田吾爺のお二方。
先生はこの後馴染みの焼鳥屋に行くと言っていた。
参加者は先生と私と私をサークルに誘ってくれた友人の宮田さんの三人だ。
サークル内では最も若い三人だか先生は四十代で私と宮田さんは六十代。
若い三人というのは少々無理があるかもしれない。
先生馴染みの焼き鳥屋はカウンターの前に椅子が五席で先客が居るので奥の座敷に座った。

「実は父の事で悩んでるのよ」
宮田さんが座ると同時に話し始めた。
「和江さんのお父さんっておいくつなの」
「八十四歳なのよ。美佐婆より一歳上だけどそれはどうでもよいか。今近くに住んでるんだけど心配でちょくちょく見に行くの。本人は大丈夫だって言うんだけど物忘れがちょくちょくあるのよね」
「そんな事言ったらうちの主人だってそうよ。この前なんか左腕を蚊に刺されたからって左手の指先にムヒの軟膏を塗って暫く固まってたのよ」
「そんな事いったらうちだって」
「まあまあ宮田さん、川崎さん話を戻しましょうか」

先生がトータル八杯目のウーロン杯を片手に割って入った。

 

 

 

後見制度は慎重に⑨

昨日、今日と連続で相談を受けました。

登記が絡む箇所ですので司法書士の先生を紹介して私でもできる契約書の作成をしました。

私のような怠け人間には紹介の仕事というのはありがたいです。

 

前回はこちらです 

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「ところで先生の大好物なお墓はどうなんですか」

急に箸を持った手をあげて田吾爺が質問してきた。
手をあげた拍子に箸についた醤油がテーブルに飛び散った。
勘弁してほしい。
できれば逆の手で挙げるかそもそも手をあげる必要はないと思うが指摘するのは場の雰囲気を壊しそうなので黙って拭くことにした。
田吾爺の言う大好物というのは大好きという意味なのだろうが、それについてあえて訂正する必要はないだろう。

「馬鹿だね田吾さん。お墓を食べられないよ」

すると美佐婆がすかさず訂正した。
田吾爺は特に反論しない。
人間ができているのだろうがこの程度で反論するのであれば先程のパンチで怒っていたはずだ。
もしかして惚れているのかもしれないがつっこむのは野暮というものだ。
これは姉さん女房誕生か。
しかし八十三歳と八十歳の恋。
温かく成り行きを見守りたいと思うが残された時間を考えると別の心配も頭をよぎる。
田吾爺頑張れ。

「大好物かどうかはともかく終活の側面からお墓をみたらやはり墓じまいでしょう。勿論自分が入るお墓を選ぶ場合もあります。これらは②の自分の亡くなった後の姿にあたるでしょう」
「そういえば先生には色々お世話になりましたね。お陰様で無事夫の実家と私の実家のはかじまいも済みました」

そうなのだ。
墓じまいがきっかけで先生と知り合うようになったのだった。

「いえいえ僕もまだ勉強中の身です。お墓は奥が深いですから」

そう答えると先生はまさかの七杯目ソルティドッグを注文した。

「今は終活を支える制度の面からご説明しましたが、夫婦の形態や子供がいるかどうかで何を重視するべきかは変わってきます。この辺りはわかりづらい側面もあります。詳しいことにつきましては当事務所の有料相談を是非ご予約いただけると幸いに存じます」
「先生商売上手やな」
「これは一回事務所に行かないと」
「最後にまとめてみましょうか」

「お願いします」

おっ、なぜか皆の息があった。
要は理解しきれていないのだろう。
そもそもお酒がまわったオツムで理解しろというのが無理な話だ。

 

想いを紡ぐ墓じまい: in 横須賀 (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社)

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 上記の本は皆様ブログで目にしている内容です。

もしよろしければ、買う必要はないですか、レビューをしていただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします。!(^^)!

 

 

 

後見制度は慎重に⑧

 前回のはこちら。

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 8回目です。

用語の説明が主ですのでちょっと退屈かもしれません。

 

 

「それから任意後見です。これは先程の財産管理等の委任契約が終了した場合に威力を発揮します」
「と言いますと」
「実は先ほどの財産管理等の委任契約というのは、基本的には本人の判断能力がなくなると同時に終了します。そうするとその後の本人を保護する制度が必要となります。その為の制度が任意後見になります」
「任意後見ですか。よく成年後見といった言葉耳にしますが」

「正確に言うと成年後見というのは任意後見と法定後見にわかれます。前者は任意ですので自分で信頼する人を見つけます。後者は法定ですので法律で定まるという事です。後者の法定後見は、判断能力の程度により、後見、保佐、補助と分かれます。通常、成年後見というとこの後見の事を差します。この任意後見、成年後見は先程の①自分の老後になります。勿論若い人でも後見つまり手助けみたいなものを必要とする方はいますので老後すべてに当てはまるわけではありません。あくまで一般論の話になります」

「いやあ任意後見と成年後見ですか。難しそうですよね。一度きっちり勉強してみます。自分に関わりないと言い切れないですもんね。ただいまいちその違いが分からないんですが」

将来関わる事だ。
妥協しないで頑張って理解しよう。

「そうですか。ではこれならどうですか。任意後見というのは自分がしっかりしているうちに自分の信頼している人、例えば家族、親類、専門家等誰でも良いですが、あくまで自分が信頼できる人と契約を結ぶものです。これに対して成年後見ですが、これは判断能力が低下しその人を守る必要がある場合に専門家、多くは弁護士、司法書士ですが、家庭裁判所が成年後見人としてつけるわけです」

「つまり自分を守ってくれる人を自分が選ぶか他人が選ぶかの違いと理解すればよいのですか」
「仰る通りです」
「簡単ではなさそうですね」

「なかなか手ごわいところですが早めに取り組んで損はないと思います。それ以外で有名なものとしては死後事務委任契約なんてのもあります」
「死後の事務の契約、ですか」
「要するに自分が亡くなった後の事務をお願いする事です。特にお一人様の場合自分が亡くなった後の問題があります。例えば葬儀です。どんな方法でするのか。お墓の問題だってあります。携帯電話やガス、電気、水道だって解約しなければならないですのでやる事は山ほどありますよ。こちらは②の自分の死後の事になります」

「終活って大変なんですね。涙が出てきそう」
「さらに見守り契約なんて言うのもありますよ」
「それは聞いたことあります」

宮田さんが反応した。
お父さんが高齢なこともありこの手の話しは結構詳しい。

「高齢者のお宅に電話を入れたり訪問したりして安否確認するんですよね」
「安否確認というより健康状態や生活状況を確認するんです」

苦笑しながら先生が答えた。

「これは勿論①の自分の老後になります」

 

後見制度は慎重に⑦

 

空より星の降るごとく

空より星の降るごとく

 

 私が大ファンの楓屋 (id:kaedeya)さんの著書です。

今日届きました。

じっくり拝読します。

 

7回目です。

前回はこちらです。

 

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「そう仰られても中々思い浮かばないんですよ。やっぱり遺言を書いたほうが良いということですか」

「勿論それも大事です。遺言は自分が亡くなった後、残された者が揉めないようにするという所に主眼があります。よく相続の事を争続と言ったりしますよね」

「争うという字の争続は聞いたことがあります」

「これは先程申し上げた②自分が亡くなった後の姿でしょう。ただ老後では自分の身体がいう事を効かなくなったり判断能力が劣るような事が想像できます。これに対応する制度としては財産管理等の委任契約、任意後見といった制度があります。こちらが先ほどの①自分の老後についてです」

「すみません。ちょっと分かりにくいんですが。もうちょっと優しく」

「ですよね。まず財産管理等の委任契約は本人の代わりに銀行からお金を引き出したり、病院や介護施設の入所の手続きをします。本人は判断する能力あって物事をしっかり理解できるのですが病気やけがで動けなくなった場合に対応する制度です」

「それって家族では駄目なのですか」

わざわざ契約を結ぶ必要はないと思ったので聞いてみた。

「勿論ちょっとした買い物なんていうのは家族で十分だと思います。ただ金融機関は本人でないと預金を下ろす事は認めないでしょう。勿論キャッシュカードを預かっていれば別ですよ。そうでない場合はやはり本人からの委任状が必要になりますがお金を下ろすたびに委任状を作るというのも現実的ではないです」

「成程。そう言われるとそうですね」

「それだけではなくて契約書を作っていない場合、他の兄弟、はっきり言えば相続人です。親の財産を食い物にしているのではないかと勘繰る場合もあります。親子といえどもお金がからむ事ですのでしっかり契約を結んで対応する事がよろしいかと思います」
「成程、そういう見方もできるわけですね」

この辺りは非常にデリケートな問題だ。
できれば兄弟で争いたくはないがお金が絡むと別だ。

 

後見制度は慎重に⑥

第6回目。

前回はこちら

 

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 今回から奥様ちょっと登場。

 

某お寿司居酒屋

「なんか鼻がムズムズするわ」
「由紀子さんのご主人が噂してるんじゃないかしら。俺一人置いて飲みに行きやがってって」

そう言うのは私をサークルに誘ってくれた宮田さんだ。

「いいのよたまには。どうせ娘が遊びに来るって言ってるし。夕飯の支度も頼んでるから大丈夫。たまには羽伸ばさなきゃね」
「それにしても先生、いい飲みっぷりですね。もう何杯目ですか」
「えっまだ四杯目ですよ。久しぶりの飲み会なので嬉しくなっちゃって。今日は飲んじゃいますよ」

しかし良い飲みっぷりだ。
目が輝いている。
しかしストレスが溜まるほど仕事をしているとは思えない。
心底お酒が好きなのだろう。

「ところで山本先生、この際だから幾つか教えて欲しい事があります」

御年八十三歳とは思えない声で美佐婆が手をあげたのだが真っ直ぐに手が伸びず、横の男性、田吾爺の左頬にヒットした。
確か田吾爺は御年八十歳、今のパンチで享年にならなければよいのだが。

両人の間ではこの三歳が大きいという事だがはたしてどうだろうか。
確かに一歳と四歳とでは明らかに違いがあるが、八十と八十三とではさして違いはないだろう。
少なくとも私はこの三歳の差に大きな違いがあるとは思えない。
しかしこの二人を見ると歴史サークルというより老老介護に近いものがあるが、決して他人ごとではないので笑えない。

「私でお答えできる事があれば何なりと」

そう言うと先生は本日五杯目のウーロン杯を注文した。
私も娘の亜紀も飲む方だが先生もなかなかどうして負けていないではないか。
まあ勝ち負けは関係ないか。

「先生、私くらいの年齢になるともねぇ、良いんでしょうか」

ん、今の言葉を頭の中で冷静に数回反覆してみた。
やはり目的語が入っていない。
それに先程幾つか教えて欲しいと言ったと記憶しているがこれでは回数など関係ないのではなかろうか。

「それで大丈夫ですよ」

冷静に先生が答えるが明らかに問いと答えが一致していない。
それとは一体何を指すのか皆目見当がつかないが美佐婆はにっこり笑ってお礼を言った。
摩訶不思議な会話で通じるから驚きだ。
不謹慎ではあるがこのやり取りがあるからこのサークルは面白いのだ。

この際だから私も聞いてみよう。

「先生、私も質問があります」
「何でしょうか川崎さん」

そう言いつつ先生は六杯目の梅酒サワーを注文した。
早すぎる。

「抽象的な質問になってしまいますが終活って何をすればよいのですか。終活という言葉はよく耳にしますが、具体的に何をすればいいのか正直よくわからないんです」

「そうですね。確かに終活という言葉は雑誌、テレビ等で頻繁に使われますよね。細かいことを言えばきりがありません。大きく分けると①自分の老後と②自分が亡くなった後の姿に分けられると思います。ここを一緒くたにすると混乱のもとです」

 

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